読書メモ - 難病にいどむ遺伝子治療

遺伝子治療が現実味を帯びてきたので、いろいろ調べてみることにしました。で、まず読んでみたのがこの本。

難病にいどむ遺伝子治療 (岩波科学ライブラリー)

難病にいどむ遺伝子治療 (岩波科学ライブラリー)

遺伝子治療というと、遺伝子疾患に対して、問題のある遺伝子を修復したり、それを補うような遺伝子情報を細胞内に入れる治療だと思っていますが、この本における遺伝子治療の定義はもっと広いようでした。いくつかの神経筋疾患について、原因となる遺伝子や発症の仕組みを解明したうえで、(冒頭に書いた意味での)"遺伝子治療"に限らず、どういう治療が考案されたり検討されているかが記載されていました。たとえば特定の遺伝子のスプライシングに作用するようなASOドラッグの話も出てきます。(スピンラザもASOドラッグですね。)

ということで、期待していた内容とはちょっと違ったのですが、いろいろ得るところもありました。筆者の方の実際の臨床経験をもとにした話が多く、半分くらいは筋ジストロフィーの話でした。筋ジスはいろいろ種類があるそうですが、患者数の多いデュシェンヌ型の場合は原因遺伝子も特定され、その遺伝子から作られるジストロフィンというタンパク質が欠乏することによって発症することがわかっているそうです。原因遺伝子が特定され、関係するタンパク質も特定されていることから、状況的にはSMAと似ていますが、薬の開発のしやすさという点では、大きな違いが2つあるようです。

1つは、SMAの場合は、SMN1遺伝子とは別に、バックアップとなるSMN2遺伝子があること。SMAの場合は、薬の開発の方針の1つとして、このSMN2遺伝子の働きを制御して正しいSMNタンパク質を作るという方法がとれることになります。デュシェンヌ型にはそういったバックアップ遺伝子はないようでした。

もう1つは、SMNタンパク質はそれほど大きくないこと。先日承認申請されたAVXS-101は、AAVベクター(アデノ随伴ウィルスベクター)にSMN1遺伝子の代わりとなる遺伝子情報を入れて細胞に届ける仕組みのようですが、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの場合は、原因となっている遺伝子が大きすぎてベクターに入らないそうです。デュシェンヌ型で欠乏するジストロフィンは3685個のアミノ酸からできているのに対して、SMNタンパク質は294個のようです。

ただ、デュシェンヌ型もスプライシング時に一部のエクソンをスキップすることによって、症状を緩和することができるらしく、その方向での新薬の研究が進んでいるようです。