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かずくん日記

脊髄性筋萎縮症(SMA)1型の息子との生活や介護の記録をつづっていこうと思います。

Spinal Muscular Atrophy - Disease Mechanisms and Therapy: Chapter 16

Chapter 7以降、しばらく専門的な話が続くので、すっとばしてChapter 16から続きを読むことにしました。Chapter 16からは、治療方法の開発の話や、治験の話が続きます。

Chatper 16のタイトルは、Spinal Muscular Atrophy Therapeutics Developmentです。治療法の開発について、概要を説明しています。各論は次章以降にゆずるとのこと。概要といっても素人には十分すぎるほど詳細に書いてありますが、いかんせん日進月歩で開発が進んでいるようなので、賞味期限切れな情報もチラホラ見受けられるように思いました。

治療薬の開発の方針としては、やはり一つ大きなものとしてSMNタンパク質の量を増やすと言うのがあるそうです。これを早い段階で行うほど良いことがわかっているとのことですが、遅い段階でもTherapeutic opportunity(治療機会)はあるだろうとのことです。SMNタンパク質の量を増やす方法の一つとして、SMN2遺伝子からの転写量を増やす、SMN2のスプライシングを修正する等があるようです。スピンラザに代表されるASOや、HDAC阻害剤というのはこれに該当するようです。

他の治療薬の開発方針としては、神経保護(neuroprotection)、幹細胞治療(stem cell therapy)、筋肉の増強(enhancement of muscule)などが紹介されていました。stem cell therapyは、たぶんいわゆる再生医療ってやつですね。これについては、ALSで治験が行われたりしてるけど、実現までにはまだしばらくかかるだろうとのことでした。やっぱり年齢がいくと、stem cell therapyに期待ということになるみたいです。再生医療ネタもしっかりアンテナを張っておかないとですね。

SMNタンパク質の量を増やすアプローチをとりつつ、それに付加する形でneuroprotectionやmuscule enhancementも行うのが、今後の治療の方針になってくる感じでした。ただし、これはきっといろいろな薬が承認されてからの話ですね。

読書メモ - 細胞の中の分子生物学

SMA関連の書籍や論文を読んでいて、遺伝子とかタンパク質の話になるとチンプンカンプンになるので、学生時代に生物をまじめに勉強してこなかったことを後悔しつつ、分子生物学の本をいくつか読んでみることにしました。

で、手始めによんだのがこれ。ブルーバックスと言うことで一般人向けに書かれており、遺伝子やタンパク質の合成まわりのことをざっくり理解するのに役立ちました。後半は、著者の研究内容がメインになるようなので、そこは興味がなければ飛ばしてもよいかもです(少なくともSMAにはあんまり関係なさそう)。

遺伝子って遺伝情報を持つものっていうのは以前から理解していましたが、じゃあ体内でどういう働きをするのかはよくわかってませんでした。この本を読んで、超ざっくり言うと、遺伝子には体内で必要となるタンパク質の設計図が書き込まれていて、身体中のいたるところで遺伝子を使ってタンパク質が作られてると言うことがわかりました。

さて、続いてもう少し専門的な本を読んでみようかな。

読書メモ - SMA発症後のSMN修復に関する論文

気になる論文を見つけたので、健康診断の待ち時間を使って読んでみました。

JCI - Postsymptomatic restoration of SMN rescues the disease phenotype in a mouse model of severe spinal muscular atrophy

SMAを発現し、かつ誕生後の任意のタイミングでSMN遺伝子の機能を復活させることができるマウスを使って、SMNタンパク質の量を増やすタイミングが症状にどう影響するかを見るという実験です。

誕生から4、6、8、10日後にそれぞれSMN遺伝子の機能を復活させたところ、4日後と6日後からのマウスはよく症状が改善した(体重が増えた=筋肉量が増加した)のに対して、8、10日後からのマウスは改善はあったけれども限定的だったようです。

実験の結果としては、発症後の治療でも十分効果がある、ただし大きな効果が期待できるのは一定のタイミングまでで、そこから先は効果はあるけれども限定的になるとのこと。だいたい8、10日後からは限定的な効果ということになるみたいです。ちなみに実験で使われたマウスの平均寿命は17日ということなので、8、10日後というのは率直に言って、あまり期待を膨らませる数字ではないなあと思いました。論文の中でも、運動ニューロン(と症状に寄与する他の細胞)は、新生児の後半まで不可逆的にダメージを受けることはないようだ、と言っており、あくまでもそれくらいのタイムスケールの話のようです。なお、実験で使ったマウスはⅠ型に相当する症状のようなので、Ⅱ型相当・Ⅲ型相当となると、また話は別なんだと思います。

論文の執筆者達は、SMNタンパク質は神経発達(neurodevelopmental)プロセス上の重要な要素というよりは、どちらかというと運動ニューロンの維持に関係しているのでは、と推測しています。実験結果の内容も踏まえると、つまりこれは、運動ニューロンがまだ残っていれば改善の見込みがあるけど、完全に脱落しているとあまり効果は見込めないということなのかなぁ?と個人的に思いました。ただ、マウスの場合は人工呼吸器をつけて命をつなぐわけではないので、そういった本当に長期間生存している状態で、長期間SMNタンパク質の量を増やすことができた時にどうなるのかは、まだ未知の領域なのかもしれません。まあ、いずれにせよ過度の期待は禁物ですね。

Spinal Muscular Atrophy - Disease Mechanisms and Therapy: Chapter 6

以前公開していた記事にいくつか間違いをみつけたので、全体的に見直して再投稿しました。

今回は Chapter 6: The Function of Survival Motor Neuron Complex and Its Role in Spinal Muscular Atrophy Pathogenesis です。この章はかなり手こずりました。Wikipedia記事こちらの論文もつまみ読みして、おぼろげながら理解したことを読書メモ代わりに書きます。

/* 例によって私の個人的な理解をもとに記述しています。間違いを指摘していただける方がいらっしゃると大変助かります。 */

SMN遺伝子から作られるSMNタンパク質は、他のいくつかのタンパク質と結合して、より大きな複合体「SMN complex」を作るそうです。SMN copmlexは体内でsnRNP(small nuclear ribonucleo proteins:低分子リボ核タンパク質)の生成に深く関係していて、このsnRNPというのは、遺伝子からタンパク質を作る際に行われるスプライシングで必要になる物質だそうです。ここがちょっとややこしいのですが、スプライシングと言うと、SMN遺伝子からSMNタンパク質が合成される話でも出てきました。その時は、SMN2遺伝子から転写によってできたpre-mRNAが、スプライシングによってmRNAに切り詰められる際に、エクソン7がスキップされてしまうというものでした(つまり、SMAはスプライシングに2つの意味で関わっているということなのですが、このことが最初まったく理解できず、読んでいてとても混乱しました)。SMN1の欠損によってSMN遺伝子が不足すると、snRNPの生成が滞って全てのタンパク質の合成で支障が出るんじゃないの?と思っちゃいます。でも、そうなると運動ニューロンどころの騒ぎではありません。実際には影響が出るの(ほぼ)運動ニューロンだけのようなので、どうもそうではないようです。

SMNタンパク質はsnRNP以外のRNP(リボ核タンパク質)の合成にも関係しているらしく、この章の筆者によると、これがSMA発症の原因じゃないかと思われているみたいです。また、こちらの論文では、脊髄中で、運動ニューロンだけ選択的にエクソン7の欠落が多く発生するとの報告があり、これも原因の一つなのかもしれません。さらに、ちょうど最近でたニュース記事↓によると、SMNタンパク質は細胞内で特定の物質を運ぶ役目も持っているらしく、これが原因じゃないかとの話もあるようです。
smanewstoday.com
この記事によると、下位運動ニューロンは筋肉に信号を伝えるために軸索を長く伸ばしており、SMNタンパク質が不足していると、軸索の先端まで必要な物質を届けることができなくなり、それによってニューロンが死んでしまうとのこと。

これだけいろいろな話が出てくるということは、SMNタンパク質の不足によってSMAが発症する理由は、まだきちんと解明されてないということなのかもしれません。

Spinal Muscular Atrophy - Disease Mechanisms and Therapy: Chapter 5

今回は Chapter 5: Transcriptional and Splicing Regulation of Spinal Muscular Atrophy Genes です。日本語にすると、「SMAに関連する遺伝子の転写とスプライシングの制御」でしょうか。この章は、まるまるSMN遺伝子とSMNタンパク質の生成過程に関する説明に充てられています。

/* この章の内容は私には専門的すぎて、きちんと理解できている自身がイマイチありません。これより先をお読みいただく際は、内容に誤りが含まれている可能性があることをご留意ください。*/


補足
DNAからタンパク質が合成される際にはいろいろなステップを踏むようですが、SMN遺伝子関連を理解するにあたっては、転写・スプライシング・翻訳だけ理解しておけばとりあえずは大丈夫そうです。これら3つの過程は、下図に示すような順番で行われます。

f:id:oganoken:20170110005708j:plain

まず、DNAから転写によってpre-mRNAが合成されます。続いてスプライシングによってpre-mRNAが切り詰められてmRNA(messengerRNA)ができます。そして、このmRNAをもとにタンパク質が翻訳(合成)されます。スプライシングの際にmRNAに残る部分をエクソンと呼び、残らない部分をイントロンと呼びます。



SMN遺伝子は下図のように9つのエクソン(1, 2a, 2b, 3, 4, 5, 6, 7, 8)と8つのイントロン(1, 2a, 2b, 3, 4, 5, 6, 7)から構成されているそうです。
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SMN1遺伝子とSMN2遺伝子の違いは、わずか5個のヌクレオチド(DNAやRNAを構成する単位)のみとのこと。SMN1遺伝子は28,075個の塩基対で構成されているらしく、そのうちのたったの5個の違い、ということになるようです。

SMN2遺伝子の場合、スプライシングによってエクソン7が欠落したmRNAができ、それによって不完全なタンパク質ができるそうです。エクソン7の欠落の理由はすでに特定できていて、SMN1遺伝子とSMN2遺伝子の5つの違いのうち、エクソン7にあるC6Uという違いが原因になっているそうです。ではなぜC6Uによって欠落が起きるかと言うと、この違いによってSMN2遺伝子のほうにはhnRNP A1と呼ばれるESS(Exonic Splicing Silencer:エクソン上にあってスプライシングを抑制する要素)ができ、それによってエクソン7の欠落が発生するというのが現時点での一番有力な説明なんだそうです(C6Uによってなぜ欠落が起きるかについては、他にもいくつか説があるそうです)。

エクソンおよびイントロン内には、スプライシングを抑制したり促進したりする機能を持つ部分があるそうです。先ほどのhnRNP A1はエクソン上にあってスプライシングを抑制するESS(Exonic Splicing Silencer)でしたね。ESS以外にも、たとえばイントロン上にあってスプライシングを抑制する部分をISS(Intronic Splicing Silencer)と呼び、イントロン6および7にもISSがいくつかあるそうです。このESSもしくはISSの働きを抑制すると、スプライシングは逆に促進されることになるので、エクソン7を含んだmRNAの生成が増えることになるようです。そのため、ESS/ISSの働きを止める物質を探すことが、創薬の一つの方針になります。ESS/ISSのうち、イントロン7にあるISS-N1というのが特に注目されていたらしく、SPINRAZA(nusinersen)はこのISS-N1をターゲットにしたASO(アンチセンスオリゴヌクレオチド)とのことです。

スプライシングはlysine acyltransferas(原文ママ。誤字かも?)やヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase:HDAC)による影響も受け、それぞれスプライシングの活性化と抑制に関連するそうです。HDACはスプラインシングを抑制するので、逆にHDACそのもの抑制する物質(HDAC inhibitor)には全長SMN mRNAと全長SMAタンパク質の量を増やす効果があるそうです。日本でも現在治験を行っているバルプロ酸は、これに該当するそうで、転写量(全長およびΔ7(エクソン7欠損)含め)を増やすと共に、全長転写の比率を増加させる効果があるそうです。ちなみにこの章では、バルプロ酸みたいな物質のことをsmall compoundsと呼んでいます。これは日本語にすると低分子化合物といった意味になるのでしょうか。

この章は他にもいろいろ情報がありましたが、私にはちょい難しすぎでした。この10年くらいの進展を見ると、転写とスプライシングの理解が進み、いろいろなシークエンス構造モチーフをターゲットにしたASOが、スプラインシングにおけるエクソン7のスキップを修正する働きがあることを証明したそうです。スピンラザの承認は、こういった研究者の方々の何年にもおよぶ積み重ねがあってのことだったんですね。

しかし、内容がかなり難しくなってきてて、そろそろ読破できる自信がなくなってきたな・・・。

Spinal Muscular Atrophy - Disease Mechanisms and Therapy: Chapter 4

今回は Chpater 4: Strategy for the Molecular Testing of Spinal Muscular Atrophy です。

章のタイトルを訳すと「SMAにおける分子検査の戦略」となりそうですが、要は遺伝子検査に関する章のようです。

SMAの遺伝子診断でまず最初にやることは、SMN1の同型接合型欠失(2つあるはずのSMN1遺伝子が両方ないということかな?)を確認することだそうです。SMN遺伝子は9つのexon(Wikipediaによると、exonとは遺伝子からRNAを転写する際に、RNAに残る部分のことを指すそうです)からなり、このうちのexon 7の有無を調べるそうです。そういえば、かずくんの遺伝子検査の結果の紙にも、exon 7の欠失が云々と書いてありました。
なお、SMN2遺伝子にもexon 7はありますが、こちらはC→Tトランジション変異が起きていて、この違いによって容易にSMN1とSMN2を区別できるそうです。

新生児スクリーニングに関連して、新薬開発のカギは、不可逆的かもしれない神経細胞の脱落が起きるよりも前に患者を特定することだとあります。アデノ随伴ウイルスによってSMNコンストラクトを投入したマウス実験では、生後1日からの投入でほぼ症状が出ず、生後5日からの投入では部分的な改善、生後10日からの投入ではほんの少しの改善しかなかったそうです。(うーむ・・・、アイザックくんママは現状維持以上の期待はしてないみたいだけど、その見立ては妥当ということなのか・・・。あれ?でも治験は発症後の患児さんでやってたような。よくわかりませんね。)

Spinal Muscular Atrophy - Disease Mechanisms and Therapy: Chapter 3

今回は、Chapter 3: Standard of Care for Spinal Muscular Atrophy です。
Standard of Care(SOC)は日本語にすると「治療標準」かなと思いましたが、医療用語的には「標準治療」が正しいみたいです。(仕事柄、なんでも標準化を進めると中身が形骸化して役に立たなくなるイメージがありますが、医療の世界ではどうなんでしょう。)

SMAの標準治療は、2007年に公表され、現在その改版が進められているそうです。Googleで 2007年のSOCを検索したところ、それっぽいものを見つけました。たぶん これ だと思います。

SMAの患児は免疫系は正常なので、ワクチン接種は一般的なスケジュールで進めることができるそうです。かずくんも、なんだかんだ言って順調にワクチン接種できています。

栄養補給の観点では、低体重の患児・患者さんがいる一方で、体重過多の人もいるそうです。また、糖尿病のリスクが高まるそうです。(糖尿病関連の問題が報告されているケースはいずれも肥満体の方とのこと。低体重の人は糖尿病は大丈夫なのかな?)

整形外科関連の症状については、とにかく事後的に何かやるよりも、予防が重要とのことです。側彎についてけっこうページが割かれていて、装具を用いた矯正や、外科手術について説明がありました。

この章は標準治療についての説明とのことで、呼吸関連と整形外科関連に多くのページが割かれていました。ただ、こういったトピックは日本語でも十分に情報があるので、あまり目新しい情報はないように感じました。