かずくん日記

脊髄性筋萎縮症(SMA)1型の息子との生活や介護の記録をつづっていこうと思います。

スピンラザ情報まとめ(2017年6月20日時点)

いよいよスピンラザの承認が目前にせまってきたようです。少しまとまった時間が持てたので、公になっていることをベースにスピンラザの情報をまとめてみました。

以下の情報は素人が集めた情報をもとに記載しています。間違い等が含まれる可能性をご留意ください。

どんな薬か

アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)と呼ばれる薬の一種で、この種の薬としては日本では初承認となるようです。

ご存知の通り、SMAの患者さんはSMN1遺伝子に問題があり、正常なSMNタンパク質(全長SMNタンパク質)をSMN1遺伝子から作ることができません。SMNタンパク質は下位運動ニューロンの維持に不可欠で、これが不足すると運動ニューロンが脱落し、SMAの特徴である筋弛緩・筋緊張低下につながります。SMN1遺伝子にはSMN2というバックアップ遺伝子がありますが、SMN2遺伝子はSMN1遺伝子と少しだけ違うため全長SMNタンパク質を少ししか作ることが出来ません。かわりにエクソン7と呼ばれる部分が欠落したSMNタンパク質(Δ7SMNタンパク質)を作るのですが、このΔ7SMNタンパク質は安定性が悪く、体内ですぐに壊れてしまいます。

スピンラザはこのSMN2遺伝子によるタンパク質合成に作用し、SMN2遺伝子から作られる全長SMN遺伝子を増やす効果を持ちます。SMN2遺伝子を2つ持つ方の場合、全長SMN遺伝子は正常なSMN1遺伝子が作る全長SMNタンパク質に比較して、10%+10%=20%程度の全長SMNタンパク質を作るそうです。スピンラザによって、この割合は40〜60%くらいまであげられるみたいです。(開発元のIonis社が出したこちらの資料のP.32参照)

Ⅰ型であれば、生後7ヶ月以内の患児で治験を行った結果としては効果ありと判断されているようです。それより月齢・年齢の進んでいる患児・患者さんについては、治験実績はないため、効果はこれからわかってくるのかと思います。アメリカですでに投与しているお子さんの動画を見る限りは、Ⅰ型については現状維持プラスアルファくらいに考えていたほうが、効果がなかった時のガッカリ感が少ないかな、という感じです。

海外での承認状況

アメリカでは2016年9月に申請され、2016年12月に承認されました。アメリカでの承認は型に関する制限は一切ありません。
EUでは、2016年10月に申請され、2017年6月に承認されました。EUでは5q SMAを対象として承認が出ていますが、5qというのはSMN1遺伝子の存在している染色体の位置を指すので、ほぼ制限のない承認と言えます。

日本での承認見込み

日本では希少疾病による優先審査品目に指定されたうえで、2016年12月に申請されました。直近では、2017年6月9日の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会で承認了承されるところまで来ています。今後は6月29日に薬事分科会にて承認了承の報告がなされ、それから程なくして正式な承認になると思います。(毎年同じようなスケジュールで審査・承認しているっぽく、だいたいこんな感じのタイムラインになるみたいです。)

医薬品関係のニュースサイト等の情報によると、今回の承認はⅠ型のみが対象になり、Ⅱ型・Ⅲ型については継続審査中とのことです。Ⅱ型・Ⅲ型の審査についても優先審査の対象になっているようなので、早期の承認に期待です。

いつから使えるのか

Ⅰ型については、仮に7月頭に承認が出たとすると、たぶん9月頭には薬価が決まり、あまり間をおかずに発売になるのかなと思います。(この辺も昨年等に承認されている薬のスケジュールをもとにした推測です。)そこから実際に病院で投与してもらうようになるまでにどれくらいかかるかは、正直よくわかりません。アメリカでは(理由はよくわかりませんが)医療機関がスピンラザの採用に二の足を踏むケースもあるようなので、日本でもどうなるのか若干心配です。

薬価について

SMAは難病や小児特定疾病に指定されているので、患者側の負担は抑えられるはずですが、薬価自体はかなり高額になるのではと思っています。厚生労働省が出している薬価算出に関する資料によると、類似薬のないものは外国の価格を参考にした補正が入るそうです。その補正に関する資料を読む限り、EUでの価格に近しい値になる傾向があるように見えました。EUの薬価が出てきたら、それがある程度参考になるかもしれません。

6月9日の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会【追記あり】

6月9日(金)に行われた薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会でスピンラザの承認可否が審議されているはずなので、医薬品関連のニュースサイトに結果が出ないかなと思っていたら、夜になって出てきました。

nk.jiho.jp

有料記事なので残念ながら詳細は確認できませんが、記事タイトルから判断するに、無事に承認了承の判断が出たみたいですね。
通常のタイムラインであれば、このあと1ヶ月くらいで承認となるようです。

ただ、今回の情報は、あくまでもニュースサイトの情報なので、確報としては1ヶ月後の承認の発表を待つべきかと思います。


[2017年6月12日 追記]
週が明けて、ニュースサイトに詳しい情報が出てきました。

1つめは、最初に紹介した記事と同じなのですが、後から情報が追加されたのか、私のリンクの貼り方がまずかったのか、↓から見に行くと、記事本文(の一部)と関連文書を見ることができます。(このリンクでも、スマホからだと見れないかもしれません)

関連文書の1つは、審議会で使用された資料っぽく、投与量など詳しい情報が載っています。


2つめの記事は、資料等はなく概要レベルの情報になりますが、全文が読めます。


いずれも、あくまでもニュースサイトの記事なので、確定情報としては1ヶ月後の承認を待つべきです。

スピンラザ EUの承認来ました

EUの承認もついに出ました。

www.sma-europe.eu

media.biogen.com

対象は、5q SMAとあり、だいたい95%のSMA患者が該当するとのこと。5qとは5番染色体の長腕という意味らしく、SMN1遺伝子がある場所だそうです。つまり、SMN1遺伝子の欠損・変異を原因とする患者には投与できることになります。おそらく遺伝子検査で確認がとれたら処方可能ということになるのでしょう。USの場合は、5qという制限はなかったはずなので、EUの方がちょっと対象範囲が狭いことになります。でも、そもそもSMN1遺伝子を原因としない患者には効かない薬のはずなので、実質的にはUSとEUの承認で違いはないと思います。

USの場合は、たしかENDEAR治験(乳児発症型:おもにⅠ型が対象)の結果をもとにした審査だったと思いますが、今回はENDEARに加えてCHERISH治験(遅発型:Ⅱ型・Ⅲ型が該当)の結果も踏まえての判断だったようです。また、発症前および発症後の患者を対象にしたOpen Label Studyの結果も参考にされたとのこと。科学的根拠を踏まえて、型に制限のない承認が出たということですね。

日本も承認が目前に見えてきたので、もしかしたらEUより早く承認出るかなと思っていましたが、さすがにEUのほうが2ヶ月早く申請していただけあって、そうはなりませんでしたね。

EUではこの後、reimbursement processというのがあり、それでようやく処方可能になるみたいです。

USでの新生児スクリーニング

USではSMAの新生児スクリーニングをやろうという動きが具体的に進んでいます。

Cure SMA | RUSP Nomination for SMA Accepted into Evidence Review

国として新生児スクリーニングを行うべき疾病のリスト(RUSP: Recommended Uniform Screening Panel)を定義していて、SMAをそのRUSPに加えるかどうかのレビュープロセスがスタートしたとのこと。最終的な決定は2018年になるそうです。

ただ、RUSPに加えられたとしても、実際にスクリーニングをやるかどうかは各州の判断に任されるみたいです。

日本でも承認薬が出てきたら、ぜひ始めたいですね。

スピンラザ 国内のアップデート!【追記あり】

国内でもついに目に見える形で動きが出てきました!

6月9日に開催される 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 にて、スピンラザの承認可否が議論されます!

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000165828.pdf

PMDAのサイトによると、この会議を通過すれば、薬事分科会への報告と並行して、1ヶ月程度で承認となるようです。そこから薬価収載にかかる2ヶ月を経て、発売となるはずです。

順調に行けば、7月承認、9月発売になるのでしょうか。優先審査の平均のタイムラインである9ヶ月よりも、2ヶ月前倒しで承認となりそうですね。関係者の方々に感謝です。あとはどういう形での承認になるかですね。

[2017年5月28日追記]
薬価収載のタイミングは決まっているらしく、例年だと次回は8月末から9月頭のタイミングにあるようです。このタイミングでたぶん薬価収載になるんだと思いますが、万が一これを逃すと、緊急収載という臨時の収載を行わない限り、11月の定期収載になるみたいです。

Roche Olesoximeの論文

Cure SMAのFacebookアカウントにて、Rocheが出したOlesoximeの論文が紹介されてました。

www.ncbi.nlm.nih.gov

有料のため中身は読めませんが、Cure SMAのポストに概要が出てました。リンク先でもAbstractは読めますね。

Olesoximeは神経保護剤という種類の薬に該当したはずです。

概要によると、今回の論文はPhase 2の治験に関するもので、Primary End Pointには達しなかったけれども、Seconary End PointとSensitivity Analysesの分析結果によると、Ⅱ型とⅢ型の患者さんで運動能力の維持を示唆する結果が得られたみたいです。(ちょっとよくわからないところは英単語のままにしてます汗)

AAN Meeting 2017 のヌシネルセン関連資料が公開されてました

AAN Meeting 2017 という(たぶん)学術会議で米国バイオジェン社が発表したと思われる資料がCure SMAにアップされていましたのでリンクを貼っておきます。

http://www.curesma.org/documents/research-documents/biogens-endear-data-final.pdf
http://www.curesma.org/documents/research-documents/biogens-cherish-data-final.pdf
http://www.curesma.org/documents/research-documents/biogens-nuture-results.pdf

アップされていた資料は3つあり、それぞれ、

  • 乳児発症型(ほぼⅠ型に相当)を対象にしたENDEAR治験(Phase 3)
  • 後期発症型(ほぼⅡ型・Ⅲ型に相当)を対象にしたCHERISH治験(Phase 3)
  • 発症前に遺伝子診断でSMAと診断された乳児を対象にしたNURTURE治験(Phase 2)

に関するものでした。

ENDEARに関しては、これまでもちょいちょい情報が出ていましたが、やはり生後7ヶ月以内に治療を始めたら、それなりに効果があるんだなというのを確認できました。CHERISHについては、2歳〜12歳のⅡ型・Ⅲ型を対象にしており、こちらもやはり良好な結果が出ているようです。Ⅱ型・Ⅲ型については、下位運動ニューロンの残存率が高いということなんでしょうか、ある程度年齢が進んでも効果が出てくるみたいですね。

今回の情報で一番の注目は、NURTUREの結果だと思います。まだ中間解析の結果のようですが、発症前に治療を開始すれば、かなり良好な結果が得られることがわかってきているみたいです。なんと、1日6時間以上の呼吸サポートが必要になる子が一人も出ていないようです。薬が承認されたら、やはり新生児のスクリーニングをやるべきなんじゃないかなと思えてきます。