かずくん日記

脊髄性筋萎縮症(SMA)1型の息子との生活や介護の記録をつづっていこうと思います。

海外でのスピンラザ情報まとめ

2017年は、ヌシネルセン/スピンラザの期待と不安が一番印象に残った一年でした。うちの場合はまだ投薬がスタートしたばかりだし、年齢が進んだ1型の子での投薬はこれから知見がたまってくる部分だと思うので、どれだけ効果があるか見極めるのは、2018年が終わるまで持ち越しかなと思っています。

年末年始に少し時間が取れたので、海外でのスピンラザの状況をわかる範囲で調べてみました。いずれの情報も出典やリンク先を明記してない場合は、SNSで得た情報になりますので、かならずしも確実な情報ではないかもしれません。参考程度に捉えてください。

まず、去年の12月に承認された米国については、2型・3型を中心に成人の方も含めて投薬がある程度進んでいるようです。ただ、利用している医療保険や病院によっては断られるケースがいまだにあるようです。

EUについては日本と同じようなタイミングで承認されていますが、保険償還の手続きが完了して全ての型で利用可能になっているのは、ドイツ・イタリア・オーストリアルクセンブルクのみだそうです。フランスは暫定的な措置で利用可能になっているとのこと。それとEUではありませんが、スイスについては20歳までの患者であれば保健を使って投薬できるようになっているようです。他の国、たとえばイギリスについては、まだ保険償還の手続きが終わってないか、もしくは一部の型のみを対象に保険償還が決まったようです。BiogenがイギリスのSMAコミュニティ向けに、11月14日付で情報を出していました。
www.smasupportuk.org.uk

別に投稿している通り、オーストラリアでは承認は通ったけど、保険償還でつまずいているようですし、カナダは生後7ヶ月かつ呼吸器管理していない条件(治験と同じ条件)で承認が出たようです。

イスラエルでは、全型・全年齢で承認が出たとの情報がありましたが、ヘブライ語の情報が多く(読めないので)確認はできませんでした。

ブラジルでも承認されているようですが、詳細はわかりませんでした。


スピンラザ以外にも、Avexis社のAVXS-101やRoche社のRG7916の治験が進んでいるみたいですね。作用の仕方は違うみたいですが、いずれもスピンラザと同じように全長SMNタンパク質の生成を増やす効果がある薬のようです。ということで、スピンラザで効果があるかどうかが、今後出てくる薬の効果を占う上でも重要になってくる気がします。

[2018年1月10日23時 追記] お隣りの韓国でも承認されたようです!
m.koreabiomed.com

親なきあと問題

親なきあと問題、普段の生活では忘れていますが、ふと思い出したりすると、しばらく頭から離れなかったりします。

関係する書籍もいくつか出ているので読んでみましたが、うちの子のように重度の身体障害のケースでは、あまりに参考にならないのかな?という感じでした。たとえばよく話に出てくる後見人制度も、おもに判断能力に不安のある方を対象にしているらしく、SMAのような筋疾患の患者の場合は意思伝達の手段があれば判断を伝えることができるので、ちょっと違うのかなあという感じです。

いろいろググってみると、筋疾患の方でも24時間の重度訪問介護を利用して自立して生活している方がけっこういらっしゃることがわかります。たとえば最近でも、次のようなニュース記事が出ていました。

このニュースによると、24時間の訪問介護を受けている方は各都道府県にいらっしゃるとのことです。もしうちの近くにも筋疾患だけど一人で自立して生活している!という方がいらしたら、いろいろお話を伺いたいなと思いました。

読書メモ - Spinal Muscular Atrophy - Disease Mechanisms and Therapy

こちら1年前に購入して何度か読書メモを投稿していましたが、ひととおり気になる章は読んだ気がするので、1つの投稿にまとめておきます。

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ヌシネルセン/スピンラザがちょうど米国で承認申請をしていた2016年10月に出た本なので、若干情報は古いかもしれませんが、とにかく情報量が豊富な本でした。

SMAの治療の歴史や原因遺伝子の特定にいたる経緯の話、臨床的な症状の説明などが盛りだくさんです。

個人的にとても勉強になったのは、遺伝子発現の仕組みとSMA患者におけるその問題点です。SMA患者の場合、SMN1遺伝子から転写・スプライシング・翻訳という一連の手続きを経てSMNタンパク質ができる過程において、特定の遺伝子変異を原因としてスプライシングが正しく機能せずExon7が欠落し、それによって不完全なSMNタンパク質ができてしまうことがよくわかりました。また、こういう仕組みだからこそ、スプライシングをうまく機能させるような物質(Exonのスプライシングを促進する物質、もしくはExonのスプライシングを抑制している塩基配列の働きを抑制する物質)を特定することが、治療につながることもわかりました。その流れで出てきたのがヌシネルセンです。

また、SMNタンパク質は体内で何に利用されているのかも興味深い内容でした。SMNタンパク質はsnRNPという物質の生成に関わっており、snRNPはスプライシングに関わる物質だそうです。ただ、そうなるとsnRNPの不足によって全てのタンパク質の合成で支障が出るんじゃないの?と思っちゃいますが、影響が出るのは(ほぼ)運動ニューロンだけのようなので、何かさらに別の理由があって運動ニューロンだけ選択的に影響が出ているんだと思います。

他にもヌシネルセンについては、薬の開発の経緯もけっこう詳しく載っていました。候補物質を見つけるために、500以上の物質をスクリーニングしたそうです。この本の執筆時点では、まだPhase 3の治験の真っ最中だったようです。

病気のことを詳しく知りたいという方や、ヌシネルセンだけでなく今後出てくるであろう薬がどういった種類の薬で、どういった効果が期待できるのかを理解したいという方は、手元に置いておくと良いかもしれません。ただ、いちおうCare Giver(介護者)も対象にした本のようなのですが、トピックによっては専門家向けの記述もあったりするので、必要なところを拾い読みするのが良いかなと思いました。

Spinal Muscular Atrophy: Disease Mechanisms and Therapy

Spinal Muscular Atrophy: Disease Mechanisms and Therapy

www.elsevier.com

ヌシネルセンのカナダでの状況

オーストラリアに続き、カナダからも残念なニュースが入ってきました。

CADTHというおそらくカナダ国内の薬の審査機関だと思うのですが、そこがヌシネルセンの審査結果を公表していました。

https://www.cadth.ca/sites/default/files/cdr/complete/SR0525_Spinraza_complete_Dec_22_17.pdf

結果は、承認ということになるのでしょうが、範囲がとても限られた承認になっているようです。1型を対象にした治験での条件とほぼ同じ条件になっています。細かな条件はありますが、大枠で言うと生後7ヶ月以内で永続的に呼吸管理していない患児のみに対して承認が出ているようです。

どうやらカナダも、オーストラリアと同様に、費用対効果も審査の際に考慮しているみたいです。カナダの場合、Quality-Adjusted Life-Year(QALY - 質調整生存年)が薬によってどれだけ獲得できるかをもって費用対効果を見ているようです。QALYは健康な人の1年を表す単位です。たとえば、病気等で年間0.3QALYしかない人が、薬を服用することによって、年間0.2QALY獲得し、かつ5年間生存できれば、0.2×5=1QALYとなり、薬によって健康な人の1年分だけ生存年を増やせたことになります。QALYで費用対効果を測る場合、薬によって1QALY獲得するためにどれだけの費用がかかるかを見るようです。で、カナダでは、ヌシネルセンを利用した場合に1QALY獲得するための費用が高すぎると考えているようです。仮に薬価を95%下げても、まだ高いと書いてあります。

承認がとても限られた範囲になったのは、費用対効果が悪いという判断を踏まえて、治験の結果から確実に効果が出るとわかっている条件に絞ったということなのかもしれません。

正直、SMAのように重篤な病気に対して、健康な人の1年間という尺度を用いて費用対効果を測ることに、ものすごく違和感を感じてしまいます。これが通ってしまったら、SMAだけではなく大半の筋疾患の薬について承認が通らなくなってしまうのではないでしょうか。患者や家族は、少しでも効果のある薬をそれこそ一日千秋の思いで待っていると思うんです。

スピンラザ初回〜3回目投薬までの変化

今週、3回目の投薬まで終わったので、左手の変化を動画でまとめてみました。

youtu.be

若干ではありますが、少し可動域が増えてきているのと、複雑な動きができるようになってきているように見えます。まあいずれによせ、他人から見たら誤差の範囲の違いかもしれませんが。

ちなみに、右手はいまのところ、ここまでの変化は出ていません。

オーストラリアでのヌシネルセンの状況

オーストラリアで、ヌシネルセンの承認がうまく進んでないみたいです。
ちょっと調べた感じでは、オーストラリアではTGAとPBACという2つのプロセスを経ないといけないらしく、TGAは承認を通ったみたいですが、後者のPBACがうまく行ってないみたいです。PBACは保険償還に関する審査らしく、日本で言うところの薬価収載・保険適用で足踏みしているっぽいです。つまり薬は使えるようになるけど、保険で費用がまかなえないということみたいです。

PBACは費用対効果という観点でも審査するらしく、どうもそこで引っかかったようです。

こちらは、オーストラリアのSMAコミュニティが出しているニュースです。

PBACが出してる資料で見る限り、1st time decision(初回の判断)としてはということみたいなので、さらに治験の情報がたまってきてりしたら、今後話が変わってくるのかもしれません。また、費用対効果の部分でつまずいていることもあり、薬価を引き下げるというオプションもあるみたいです。

いずれにせよ、オーストラリアでも早く薬を使えるようになって欲しいところです。

※短時間で調べて書いた内容なので、間違いや不正確な情報が含まれているかもしれません。間違いを見つけたら、随時アップデートしておきます。

AVXS-101で新たな治験

AvexisのAVXS-101が新たな治験を始めるみたいです。

Cure SMA | AveXis Announces Plan to Initiate Phase 1 Trial in SMA Type 2 Utilizing Intrathecal Delivery of AVXS-101

これまでやってきた治験は1型を対象にしていましたが、今回は2型が対象です。また、1型の治験では静脈からの投薬だったみたいですが、今回は髄腔に直接投与するみたいです。スピンラザと同じ方法ということでしょうか。いろいろな投薬方法を試すということなのかもしれませんが、ぜひ静脈からの投与を模索して欲しいところです。

今回の治験はUSのみで、引き続きAVXS-101については日本での話は出てきてないようです。